船の上で暮らす老人と少女がいた。 10年前、老人がどこからか連れてきて以来、少女は釣り人を運ぶ船の上から一歩も出ないまま、もうすぐ17才になろうとしていた。 それは、老人と少女が結婚する日でもあった。 老人は、カレンダーに印を付け、その日を心待ちにしていた。
少女に、いたずらする男がいると、老人は弓で威嚇して彼女を守った。 その弓を放ってする弓占いは、釣り人に人気だった。 老人と少女は、固い信頼で結ばれていた。
しかし、釣り人の中に一人の青年が乗った日から、二人の関係は微妙に変わり始める。
2004年、「サマリア」でベルリン国際映画祭監督賞を、「うつせみ」でヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞と、同じ年に世界3大映画祭の監督賞2冠に輝くという快挙を成し遂げた韓国映画界の鬼才、キム・ギドク監督の12作目。
「弓」の中にある言葉は客である釣り人のものだけ。しかも、必要最小限。主人公の老人と少女に言葉はありません。 また、劇中で描かれる場所は大きな海に浮かぶ船のみ。故に、状況を把握するのためのものは、釣り人のわずかな言葉と、老人・少女の表情・行動しかありません。
そんなわずかな情報しか与えられないのに、「弓」からは非常に深く、引き込むような力が感じられます。 それはキム・ギドク監督の脚本力、演出力の素晴らしさはもとより、老人役のチョン・ソンファン、少女役のハン・ヨルムの圧倒的ともいえる演技からくるもの。
どこまでも謎を明かそうとしない脚本、無駄のない映像、心を掴む音楽、そして表情だけで全てを理解させてしまう演技力。 ここまでくると、もう引き込まれない理由はありません。キム・ギドク監督の”女性を美しく撮る”という能力もいかんなく発揮されていて、ハン・ヨルムを観るためだけでも価値があります。
そんな素晴らしい「弓」、私は冒頭から見事に映画に引き込まれ、観入ってしまいました。そして、映画の終盤、老人のもとに少女が戻る。とても美しく感動的。もうここで終わらせても良いのではないかと思いましたが、映画はまだまだ続きます。さて、ギドク監督はこの素晴らしい作品をどのように閉めるのでしょうか…。
ん…。ちょっ、え、なんで、えー!ちょっと、なんでぇ!
もう叫ばずにはいられませんでした。何が起こっているのか全く理解できません。これまで築き上げてきたものが一気に崩れ落ちるラストシーン。ギドク監督、さすがにそれはやりすぎですよ…。ここまで来てなんでもありですか。
ホント惜しいの一言。ラスト一歩手前までは非常に質の高い芸術的な作品だったのですが。なぜああいう終わらせ方をしたのでしょうか…。うーん、残念。
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