メキシコシティ。街中を暴走する1台の車。車内には2人の若者と、重傷を負った1匹の犬。 「何であいつらに手を出したんだ!?」犬の出血を抑えている男が、運転手の男に叫ぶ。 そこへ、後ろから車が。どうやら彼らはその車から追われているらしい。
強引な運転で追っ手を振り切る彼らだったが、喜んだのもつかの間、信号を無視したために交差点を通りかかった車に激突してしまう…。
「バベル」でカンヌ国際映画祭監督賞、ゴールデングローブ賞を受賞し、映画監督として確固たる地位を確立したアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。 そんな彼の長編デビュー作となるのが「アモーレス・ペロス」です。
映画の構成はイニャリトゥ監督が得意とするオムニバス形式。映画はある交通事故から始まり、時間を戻して3つのエピソードが描かれます。
兄嫁に恋し、彼女と街を出たいという欲望から飼犬を闘犬にする青年を描く「オクタビオとスサナ」。 不倫の末、同居を始めた人気モデルと広告デザイナーが事故を機に転落していく様子を描く「ダニエルとバレリア」。 元ゲリラの殺し屋が、革命のために捨て去ったはずの家族への愛に苦しむ姿を描く「エル・チーボとマル」。
「アモーレス・ペロス」は日本語に直すと「犬のような愛」という意味。3つのストーリーには、それぞれに歪んでしまった、あるいは実ることの無い愛が描かれており、そしてどのエピソードにも”犬”が登場し、それぞれのエピソード(人物)を象徴しています。 交通事故による3つのエピソードの”縦のつながり”と、人物と犬という”横のつながり”が絶妙に絡み合う脚本は秀逸。
人物たちの苦悩する姿、心が潰れてしまうような感情の表現も素晴らしい。 特にガエル・ガルシア・ベルナル演じるオクタヴィオ、エミリオ・エチェバリア演じるエル・チーボ。それぞれのエピソードの結末でみせる感情表現には、こちらも胸を潰されるかのようです。
また、一切美化することなく、文字通りさらけ出したような、それでいて現実臭い暴力描写も強烈。「アモーレス・ペロス」のテーマである”愛”が”暴力”を補完し、”暴力”が”愛”を補完する。 愛と同様、暴力も「アモーレス・ペロス」のもう一つのテーマと言えるかもしれません。
こんなにも深く、ざらついていて、プレッシャーのかかる作品は久しぶりでした。 153分という長い作品ながら、全く長いと感じないほど引き込まれます。 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、やはり並みの監督ではありません。
そしてガエル・ガルシア・ベルナル。カッコ良過ぎ。 調べてみると、実際の彼自身も相当カッコ良い。パンク精神持ってますね。個人的に今後要注目の人物です。
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